宮坂昌之阪大教授のワクチン開発最前線
2020年4月30日、全国の新型コロナ感染者は1万4300人(+182人)、死亡は454人(+19人)、大阪府の感染者は1625人(+28人)となっている。大阪府民は全国で最も外出自粛し、新規発症者は減少してきている。
午後5時前、テレビをつけると、吉村洋文大阪府知事がLIVE出演されていた。吉村知事は「なんとか国産ワクチンを開発したい。そのために、大阪大学、大阪府立・市立大学、大阪府・市病院機構が、4月14日に協定を結んだ。枠を超えてワクチンを開発し、7月に医療従事者に接種し、年内には10~20万人に接種したいと思っている」と話された。
4月28日、Yテレビ"ミヤネ屋"で、宮坂昌之阪大教授が「ワクチン開発の最前線」の生解説をされていた。宮坂教授は免疫学の権威で、私が阪大2内循環器脂質研のチーフをしていた時、松澤佑次教授から、「宮坂先生と動脈硬化の共同研究をするよう」言われ、宮坂先生の"接着分子"の本を読んだことがある。
宮阪昌之阪大教授は「ワクチンには3種類ある。生ワクチンは、弱毒化したウイルスで抗体を作り、はしかや結核(BCG)がその例だ。効果が長いというメリットがあるが、作製時間が長く、稀に発症してしまう。
不活化ワクチンはウイルスの断片で抗体を作り、インフルエンザがその例だ。安全性が高いというメリットがあるが、作製時間が長く、効果持続が短い。DNA-RNAワクチンはウイルスの遺伝子で抗体を作る。安価で大量に作れ、作製時間は短いが、免疫効果が弱く、効果持続期間がわからない。
中国人民解放軍は不活化ワクチンを、米国モデナ社はRNAワクチンを、英国オックスフォード大学はDNAワクチンを、大阪大学はDNAワクチンを開発している。今日出てきた論文では、中国が不活化ワクチンを使って、結構いい結果が出ている。
通常時の開発期間は、安全なワクチンができるまで平均10~15年かかる。基礎試験(動物実験)に1~10年、ヒトへの臨床試験は、第1相(安全性試験など初期試験:100人以下で試行)で~1年、第2相(安全性試験・投与量を変えて免疫の強さを計る:数100人で試行)で2~3年、第3相(大規模な安全性・有効性試験:数1000人で試行)で2~4年、承認申請で承認されるまで9カ月以上かかる。開発費用は基礎試験で10~20億円、ヒトへの臨床試験第1相と第2相で50~100億円、第3相から申請承認まで500~1000億円かかる。ワクチン開発は長い期間とお金がかかるが、副作用などで、実際に商品になるのは6%しかない。
多くのワクチンを国産生産しているが、HIV(エイズ)・肺炎球菌・子宮頸癌などのワクチンは輸入している。歴史を見ると、ワクチンは自国優先となっており、できれば国産が望ましい。ワクチンが、全国の人に普及するのに、1年半はかかるだろう」と解説された。
ワクチン開発に、最低560億円かかるが、商品化は6%と低い。製薬会社が、ワクチン開発に尻込みする(メタボ教室第772段「本庶佑3つの提言」)のが理解できた。平時ではワクチン開発に10年以上かかるが、非常時ではハードルが下がり、効果が弱くて多少副作用があっても認可されるだろう。大阪は、ワンチームとなってワクチン開発に取り組んでいる。少しでも早く、国産のワクチンが成功することを願う。