病診連携の会とC型肝炎・潰瘍性大腸炎
2020年9月12日、大阪市北区にあるヒルトン大阪で「福島区・此花区 消化器地域連携勉強会」が開催された。
私にとって、8か月ぶりの勉強会になる。大阪府ではCovid-19(新型コロナ感染症)が少し落ち着き、大阪府医師会による学術講演会も再開し始めた。9月の講演会は58回で、座学の講演会は33回(57%)と、Webのみの講演会25回を上回るようになった。Covid-19対策も十分行われており、入り口でのアルコール消毒、会場内でのマスク装着、2~3人掛けの横長の机に椅子は1つで、ソーシャルディスタンスが保たれていた。
午後3時、関西電力病院消化器・肝胆膵内科の河路光介医師による「C型肝炎治療における当院でのDAAs治療の実臨床」があった。座長の先生は「久しぶりの講演会で、緊張しております」と挨拶された。
河路光介医師は「日本にHCV(C型肝炎ウイルス)保有者は150万人いる。HCVに感染すると70%の人が慢性肝炎になる。慢性肝炎になると約20年後に肝硬変になり、肝硬変になると約10年後に肝がんになる。
HCVの治療は、2014年からDAAs(インターフェロンなしの抗HCV薬)治療になった。DAAsは慢性肝炎で99%、肝硬変で95%の人に効果がある。HCV保有者は、肝機能障害のない人も全員、DAAs治療の適応になっている。DAAs治療のデメリットは、抗HCV薬の薬価が高いことだ。現在使われている抗HCV薬は5種類あり、少し安くなったが1回の治療に360~460万円かかる。幸い医療費の助成制度があるので、自己負担は1カ月1~2万円、3カ月で3~6万円ですむ」と講演された。
フロアから「抗C型肝炎ウイルス薬が、肝機能障害のない80歳代や90歳代のHCV陽性者に使われている。どう思われますか」と質問が出た。演者が即答できなかった所、座長の先生が「これは私の個人的な考えですが、その人によって異なると思う。80歳代後半でも元気な人は投与する場合がある」と助け船を出された。
全てのHCV陽性者に、抗HCV薬を投与すると、410万円×150万人=6兆1500億円となる。HCVに感染して数10年後に肝がんが発症するとなると、意義は少なくなる。私と同じような考え方の人が、会場内に少なくとも2人はいると安心した。というのも1年前、阪大2内の後輩医師に「抗HCV薬は高額で、日本にはHCV保有者が2%もいる。誰にでも使うと何兆円もかかり、日本の医療費がパンクする」と話すと、「抗HCV薬は99%の人に効果がある。誰であろうと、肝がんを防ぐために使えばいい」と反論されたからだ。
午後3時45分、JCHO大阪病院消化器内科の日山智史医長による「潰瘍性大腸炎の治療戦略と最近のトピックス」があった。座長の先生は「久しぶりに先生方とお会いでき、嬉しく思っています」と挨拶された。
日山智史医長は「潰瘍性大腸炎の治療薬は、内服薬や点滴静注薬など、この2年で多くの新薬が出たが、まだ治る病気ではない。潰瘍性大腸炎患者のCovid-19の発症頻度や死亡率は一般の人とかわらないが、ステロイド服用患者の発症頻度や死亡率は、2~3倍と高いので注意が必要だ」と話された。
大阪では9月からWebでなく、座学での講演会が多くなった。Covid-19で懇親会がないのは残念だが、知識欲を満足させることができた。