大阪の新型コロナ医療と重症化リスク
2021年1月18日、第66回大阪産業医学研究会(会長:下村伊一郎大阪大学内分泌代謝学教授)がWeb開催された。
午後6時10分、廣部一彦代表幹事は「ホテルグランヴィア大阪で開催予定だったが、大阪府に緊急事態宣言が発令され、急遽Web開催に変更した」と挨拶された。
市立豊中病院の岩橋博見副院長兼内科主任部長による講演「コロナ禍における糖尿病患者の療養指導」があり、「2020年2月22日から、COVID-19診療を行なっている。糖尿病患者での感染率は変わらないが重症化しやすく、中国の7337人を対象とした研究では、糖尿病の死亡率は7.8%(対照群2.7%)と高いことが報告されている。市立豊中病院でのICU(集中治療室)へ入る重症化率は、糖尿病で1.59倍、肥満で2.16倍、人工呼吸器は糖尿病1.97倍、肥満2.13倍、死亡率は糖尿病で2.02倍、肥満は1.10倍だった。多変量解析では、年齢・糖尿病・肥満・リンパ球減少の4つが独立した重症化リスクだった」と話された。
日本では、コロナ患者が少ないにもかかわらず医療が逼迫しており、要因として民間病院が受け入れていないことが問題となっている。東京のコメンテーターは、その一因として「民間病院に、感染症や呼吸器の専門家が少ない」ことを挙げていたが、大阪の新型コロナ医療は専門外の人が多く担っている。大阪の公立病院の大部分は阪大系列の病院で、感染症や呼吸器の専門家は少ない。
1990年代、阪大病院に勤務する内科医は500名いたが、呼吸器専門は3内の3名(0.6%)しかいなかった。結核などの呼吸器疾患は研究しつくされていて、学位(博士号)がとりにくいためだ。逆に、1内・2内・3内・4内それぞれに内分泌代謝(内分泌・肥満・脂質代謝・糖尿病)の研究室があり、内分泌代謝を専門とする医師は150名(30%)もいた。
市立伊丹病院に勤務した1993年、私の受け持ち入院患者は16名で、肥満・糖尿病は1~2割にすぎず、ほとんどは呼吸器疾患(肺がん・肺炎・気管支喘息)と脳血管障害(脳梗塞・脳出血)患者だった。循環器専門医は循環器疾患以外を、消化器専門医は消化器疾患以外を受け持ちたがらない。
2003年のSARSの時は、院長命令で内科主任部長をしていた最年長で肥満が専門の私1人が、SARS疑い患者3名(40℃の広州帰り2名、香港帰り1名)を全て診察した。2020年の新型コロナでも大阪では、院長命令で最年長の神経内科部長が先頭に立ち、コロナ診察を行なっている公立病院がある。最年長の糖尿病科部長がコロナ診療を行っている公立病院もあると聞く。
大阪の新型コロナ患者の受け入れは、主に公立病院がおこなっており、その多くは阪大系の病院だ。大阪にも、大阪医大など昔から呼吸器内科がある私立医大があるが、私立医大の医師は民間病院に勤務することが多い。
大阪大学に呼吸器科ができたのは2002年で、まだ19年しか経っていない。阪大病院にいた現在40歳以上の医師は、内分泌代謝専門の医師(30%)が感染症・呼吸器専門の医師(0.6%)の50倍多い。感染症や呼吸器の専門家が少ない大阪の新型コロナ医療は、肥満・脂質代謝・糖尿病・神経内科などの専門家にも担われている。