注射針の長さと肥満・力士の皮下脂肪厚
2021年3月11日、職場で「安全衛生委員会」があった。毎月、本社・商事・IT・工場・輸送の5部署で、別々にテレビ会議を行なっている。
午前10時15分、リモート会議があった。私は「大阪の重症病棟使用率は、28%と4カ月ぶりに30%(62/221人)を下回った。大阪の医療従事者31万人のうち、26万人の新型コロナワクチン接種が、4月末までに始まる。集団接種と個別接種の併用となる」と発言した。
午後0時、大阪の街は緊急事態宣言解除で、活気が戻っている。人気の鯛めしや・つけ麺・中華料理店には行列ができ、ランチがフレンチ6000円、鮨2800円、鰻重3800円、串カツ3000円、焼き鳥3000円の高価格店も開き始めた。私は「博多もつ鍋 あろおん」で、900円の"気まぐれ定食
表示"を食べた。
一昨日(3月9日)のテレビはどこも、「1瓶あたり5回とされていた接種回数を、注射器を変えることで7回に増やせると、京都の病院が発表した。糖尿病のインスリン用注射器を使えば、2.25mlを0.3mずつの7回使える。問題は針の長さが13mmと筋肉注射用に使われる注射器の針25mmより短い。
宇治徳洲会病院では、接種を受ける人の皮下脂肪の厚さを超音波装置で測り、厚さ10mmまでの人にはインスリン用注射器、それより厚い人には通常の注射器で接種している」と放送していた。
上腕外側の皮下脂肪の厚さについては、1981年の第2回日本肥満学会で発表した(ヒト肥満症の脂肪組織に関する研究-CTスキャンによる脂肪組織の測定:徳永勝人、石川勝憲、松澤佑次、三木均、垂井清一郎:p144、1981)。図
表示は、高度肥満者の上腕CTスキャン像で、1メモリは1cmだ。中央が骨、その周囲の白い部分が筋肉、皮膚と筋肉の間の黒っぽい部分が皮下脂肪になる。
8名の高度肥満者(BMI 42)で、CTスキャンで測定した上腕背側部(図2
表示:Triceps CTスキャン)の皮下脂肪の厚さは18~60mmだった。全員11mm以上で、高度肥満者ではインスリン用注射器の針は使えない。8名中6名が25mm以上で、高度肥満者では75%の人が筋注ではなく皮下注になる。
力士13名(BMI 36)の上腕外側の皮下脂肪の厚さを、CTスキャンを用いて測ったことがある。0.5~2.8mmで、3名が10mm以下だった。力士では、13名中3名がインスリン用の注射器を使うことができる。13名中1名だけが25mm以上だったので、大部分の力士は筋注用の針で、筋肉注射をすることができる。
1980年頃、高度肥満者の皮下脂肪厚を、超音波装置で測定することは困難だった。高度肥満者の皮下脂肪は均一ではない。皮膚と筋肉との間で反射して、皮下脂肪の厚さが半分に出てくる。皮下脂肪厚が80mmの高度肥満者では40mm付近で、皮下脂肪厚が60mmの人では30mm付近で反射する。皮下脂肪が厚くなると、脂肪組織を養うため、中央付近に血管網が発達しているのかもしれない。
新型コロナワクチンは、皮下注ではなく筋注になっている。上腕CTスキャンで皮下脂肪の厚さを測定すると、大部分の高度肥満者の皮下脂肪厚は25mm以上で、筋注ではなく皮下注になる。力士では13名中1名のみが、皮下脂肪厚25mm以上であった。