大阪の病床ひっ迫と中小民間病院
2021年5月6日、大阪の職場に「医療従事者向け新型コロナワクチン接種案内」が届いた。
スマホで、接種予約をした。接種医療機関の5月の予約は埋まり、大阪市内の予約は6月ほぼいっぱい、大阪府内は6月半数近くが空いていた。私は、豊中市の病院で6月1日の予約を取ることができた。医療スタッフは、大阪市内の病院で6月22日の予約を取ることができた。大阪の医療従事者の予防接種は、7月中旬までかかりそうだ。
診察は換気のよい3方向にドアが空いている処置室で行っている。イギリス変異株は感染力が強いので、細長い2メートルの採血台の両端に医師と患者用の椅子を置き、中央にアクリル板を設置した。
午前10時30分、「安全衛生委員会」のテレビ会議があった。私は「大阪は新型コロナのイギリス変異株で感染者が急増し、病床がひっ迫している。昨日の重症者は446人で、80人の重症者がコロナ重症病床に入れなくなっている。自宅療養は1万3000人、自宅待機は3000人、ホテル療養は1800人いる。入院者数は2100人、入院率は10%で、コロナに感染しても10人に1人しか入院できなくなっている。変異株は感染力が強く重症化しやすく、40~50歳代の人でも亡くなっている。3密でなく1つの蜜でも感染するので、会話をする時は換気のよい所でマスクを付け、1.5~2メートル離れて会話して下さい」と発言した。
午後0時、大阪の街は、人通りが少ない。和食、洋食、居酒屋など飲食店の3軒に1軒は「緊急事態宣言のため5月11日まで休業します」の張り紙があった。
午後、医療スタッフから「日本の新型コロナ感染者数は、欧米に比べ1~2桁少ないのに医療ひっ迫しているのは何故か?イギリスなど公立の大病院が多いのに、どうして日本は民間の中小病院が多いのか?」と聞かれた。
私は「日本が中小病院に優遇政策をとってきたからだ。20年前の市立伊丹病院時代、200床以上の病院の保険点数は、200床未満の病院に比べ低かった。199床の病院が多いのはそのためだ。糖尿病の指標のHbA1cを測定しても、200床以上の大病院の保険点数は低く抑えられていた。糖尿病患者をいくら紹介しても、2~3割の患者は"大病院の方が安い"という理由で戻って来た」と話した。
特定疾患(糖尿病、高血圧、高脂血症、虚血性心疾患、甲状腺障害、喘息など)の場合、200床以上の大病院と200床未満の中小病院では、診療報酬に3倍の差がある。200床以上の大病院では再診料740円、外来管理加算0円、指導管理料0円で合計740円だが、200床未満100床以上の中病院では再診料730円、外来管理加算520円、指導管理料870円で合計2120円になる。ちなみに診療所は再診料730円、外来管理加算520円、指導管理料2250円で合計3500円だ。
欧米に比べコロナ患者が少ない日本で、重症病床がひっ迫している要因の一つは、コロナ患者を受け入れにくい中小民間病院が多いためだ。200床以上の大病院と199床以下の中小病院との間には、診療報酬に大きな差がある。中小病院を優遇し、大病院を抑制して地域密着型をめざした日本の医療だが、新型コロナでは脆弱な体制となっている。新たな感染症が来た場合に備え、診療報酬を見直す必要がある。