「華氏451度」とネット時代の焚書坑儒
2021年6月14日、NHK Eテレ"100分de名著"で「華氏451度」をしていた。
「華氏451度」はレイ・ブラッドベリによって1953年に書かれたSF小説で、題名の華氏451度は紙が燃え始める温度の華氏451度(摂氏233度)を意味している。本の所持や読書が禁止された架空の時代で、本が見つかれば、昇火士(ファイアマン)が駆けつけ本を焼却し、所有者は逮捕される。
テレビでは「本が劣化したいきさつは、ラジオ・テレビなどが大衆の心をつかみ、中身は単純化され、映画・ラジオ・雑誌・本のレベルが落ちた。
高速化した社会では、哲学・歴史・語学といったものが、役に立たないものとして疎んじられる。時間がない中で、すぐに楽しめるスポーツのような娯楽や、活字を減らしてマンガやグラビア写真のページを増加させた雑誌が持て囃される。メディアは、どんな人にも不快が起こらないように配慮し、どれも当たり障りのない同じような内容になっていく。
焚書の引き金を引いたのは、技術の進歩と大衆搾取と少数派からのプレッシャーだ。人が本を読まなくなった理由は、社会の加速化、反省的思考から反射的思考への変化、事なかれの低俗化・均一化だ。抗議の声を恐れて、表現者が自ら表現を手放していく」と放送していた。
今年(2021年1月)になって、Yahoo!やGoogleで"徳永勝人"を検索すると、2020年末1ページ目に載っていた「徳永先生のメタボリック教室」が、突然9ページ目に急落した。2020年12月29日に、メタボ教室第825段に「新型コロナの感染拡大」をアップした直後からだ。
友人は「Googleペナルティではないか。GoogleはAI(人工知能)でワードを検索し、削除している」と言う。
Googleペナルティは手動と自動の2種類あり、手動ペナルティは削除など厳しいペナルティになるが、警告メッセージが送付されるので、どの部分がよくないかわかり修正できる。自動ペナルティはサイトの順位が急速に下がり、どの部分がよくないのかわからないので修正が難しい。
パソコンの日本での検索シェアは、1位 Google 67%、2位 Yahoo!25%、3位 Bing 7%となっている。引っかかりそうなワードを削除したが、半年経ってもGoogleペナルティはかかったままだ。
「華氏451度」は、68年前に執筆されたものとは思えないほど、現代社会に当てはまる。日本のSNSの検索は、大国やGAFAに握られている。削除や検索ランキング低下を一瞬で行なうことができ、記憶や思想をコントロールされる可能性がある。紙媒体の新聞・雑誌・本の方が、一瞬で削除されるネットより、安全・安心な記録・思考の伝達法なのかもしれない。