コロナ禍のメタボ・メンタル
2021年7月5日、第67回大阪産業医学研究会がWebで開催された。
午後6時、廣部一彦代表幹事は「職域での新型コロナワクチン接種が行われている。コロナ禍で、メタボとメンタルが問題となっている。在宅・テレワークで通勤が少なくなり、運動量が減っている。人間ドックでは、3~4kg体重が増えた人が多く、メタボリックシンドローム、脂肪肝、高中性脂肪血症、糖尿病、高血圧が増加している。
昼の雑談、夜の一杯が減り、当たり前の日常が失われた。コミュニケーションがとれなくなり、メンタル障害が増えている。上司や同僚のマスクを外した顔を見たこともない新入社員や転職してきた社員がいる。上司は、新入社員の指導をした方がいい」と挨拶された。
夜のニュースは、どのテレビ局も「ワクチン不足で、急ブレーキがかかった」と放送していた。泉房穂明石市長が「西村康稔(やすとし)新型コロナウィルス感染症対策担当大臣(兵庫県選出)に『ワクチンを5万回分注文したが2万回分しか来ない』と直談判したら、西村大臣から『兵庫県か他の市町村に相談して』と言われた」と会見されていた。
これを見て、21年前、私(写真
)が市立伊丹病院内科主任部長時代に起きた"インフルエンザワクチン不足騒動"を想い出した。メディアが「インフルエンザで高齢者の死亡が増えている」と報道し、ワクチン不足が起きた。ワクチン接種を希望する高齢患者さんのため、伊丹市内のクリニックに問い合わせたが、残っていなかった。
冬がすぎ、兵庫県のある地域のいくつかの病院が、インフルエンザワクチンを大量に買い占めていたことが明らかになった。使われなかったワクチンは破棄された。ワクチンは買値で引き取られるので、病院はいくら買い占めしても損をすることはない。その後、ワクチン購入は、前年度実績の+30%までとなった。
コロナ病院の友人は「ワクチンは、ファイザーもモデルナも不足していない。ファイザーは4000万回分残っており、余っている自治体が不足している自治体に回せばいい。ワクチン代は"ただ"なので、職域接種では各企業が多めに請求している。供給されたワクチンの4割が残っている大学もあり、余ったワクチンは破棄される。今のデルタ株では、40~50歳代の重症患者が多く、大学より40~50歳代に集団接種した方がよかった」と言う。
各自治体にあるワクチン在庫量は、供給された量とVRS(ワクチン接種記録システム)を照らし合わせればすぐわかる。国や県が、各市町村のワクチン在庫量を公表すれば、ワクチンの偏在がわかり、ワクチン接種は進むだろう。
新型コロナのワクチン接種は初めてのことで、スピードも要求され、試行錯誤でやるしかない。過去の経験を活かし、ワクチンは自治体や職域の要求通りではなく、接種した実績に応じて供給すればよい。